増刊号 脳卒中の作業療法 最前線
第4章 支援技術Ⅲ 生活期:生活の広がりに向けて
12 公共交通機関の利用に関するアプローチ
澤田 辰徳
1
Tatsunori Sawada
1
1東京工科大学
pp.961-964
発行日 2021年7月20日
Published Date 2021/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001202646
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公共交通機関の利用目的
われわれの日常生活では,外出を伴う「作業」が数多く存在し,人は毎日のように外出する.外出の目的には,仕事や学業等の生産活動から,ショッピングや趣味等のレジャー領域等,広範囲にわたり,人のQuality of Life(QOL)に直結している.脳卒中者には身体機能のみならず認知機能の障害を呈することが多々あり,外出の制限因子となる.そのため,OTがこれらの対象者の外出を支援する機会は多く,重要な役割であるといえる.実際,われわれの臨床実践の法的根拠としても活用される,厚生労働省の医政局長通知にも「外出などのIADL訓練」に積極的にOTを活用することが記載されている1).
外出の手段としては,自転車や自動車等の自操するモビリティと,公共交通機関に代表される他者が操作して輸送されるモビリティに大別される.自操式モビリティの範囲は免許の有無により大きく左右され,免許不要のモビリティ(徒歩,車いす,自転車等)は移動範囲が狭くなりがちであるという欠点がある.一方,自動車等は広範囲な移動を可能にするため利便性に優れるが,利用は免許保有者に限定される.さらに,免許保有者でも脳卒中後遺症による心身機能の障害(特に高次脳機能障害)によって,免許停止もしくは取り消しという状況になることもある.そのような場合には,公共交通機関の利用は大切な作業を遂行するための有用な手段となる.
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