講座 「まち」をつくる側からの提言・2
公共交通機関と交通バリアフリー法
溝端 光雄
1
,
北川 博巳
1
Mizohata Mitsuo
1
1(財)東京都老人総合研究所人間科学系生活環境部門
pp.579-583
発行日 2001年8月15日
Published Date 2001/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551105863
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1.はじめに
近年,高齢者や障害者にやさしいまちづくりが声高に叫ばれ,これまでも国や地方で様々な事業が実施されてきている.ところが,実際にまちを散策してみると,公共交通機関や道路などの社会基盤には未だに多くのバリアが残存しているように思う.何故,バリアの除去が進まなかったのか.その根元には,こうした整備に対する社会的な合意がなかなか得られなかったという事情がある.しかしながら,我が国が世界一の超高齢社会に接近し,ノーマライゼーション理念に対する理解が徐々に浸透するなかで,高齢者や身体障害者等が自立した生活を行い積極的に社会と係わるべきであるとの社会的認識が高まり,昨年,「高齢者,身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律(以下,交通BF法)」(国土交通省・警察庁・総務省が関係)が公布・施行された.社会基盤のBF化を進める法制度ができたという点で意義深く,今後の具体的な展開が期待されている.いわば,本法の施行で建物や歩道の一部を対症療法的に改善していた点的整備の時代から,地域の主要なターミナルとその周辺に存在する諸施設を総合的かつ計画的にBF化する面的整備の時代に向けて,我が国の社会基盤整備が入ったことを意味している.
本稿では,交通BF法に基づいて今後のまちづくりを展開するためには何が必要となるのか,更に同法による基盤整備の限界とそれをクリアするためにはどうすれば良いのかについて,筆者らの見解を述べてみたい.
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