- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
2019年(令和元年)12月,議員立法の「健康寿命の延伸等を図るための脳卒中,心臓病その他の循環器病に係る対策に関する基本法」(脳卒中・循環器病対策基本法)が施行された.そして,これに基づき策定された「循環器病対策推進基本計画」1)が2020年(令和2年)10月に閣議決定された.この中で,2018年(平成30年)の「人口動態統計」(厚生労働省)によると脳血管疾患は死亡原因の第4位であり,さらに,2019年「国民生活基礎調査」(厚生労働省)によると,介護が必要となった主な原因に占める割合として脳血管疾患は16.1%であることが指摘されている.また,2019年度の日本作業療法士協会会員統計資料2)によると,脳血管疾患は,主たる対象疾患別会員数の項目において毎回群を抜いて多い状況にある.
では,われわれが対象とする脳卒中対象者は,どのような病態を呈しているであろうか.運動麻痺ひとつとってみても,少しぎこちない程度のごく軽度から,まったく動かすことができない重度まであり,筋緊張の状態も痙性や弛緩,固縮様とさまざまである.その他にも,感覚障害,失調症,高次脳機能障害,構音障害,嚥下障害等,症状は非常に多様である.それゆえ,対象者が抱える生活障害は複雑であり,目標設定や治療戦略,治療手技は個別性に応じたものとなる必要がある.
一方,作業療法の理論や技術にもさまざまなものがある.あまりにも多様化が進み,何から着手すべきか迷う方も多いと思われる.そして,すべてを臨床に活かせるレベルまで習熟することは容易ではない.「脳卒中治療ガイドライン」や「作業療法ガイドライン—脳卒中」等に従い,一定水準のスタンダードなリハの実践が推奨されるのは必然のことであろう.
Copyright © 2021, MIWA-SHOTEN Ltd., All rights reserved.