増刊号 脳卒中の作業療法 最前線
第1章 総論
4 脳卒中者の作業療法における目標設定
友利 幸之介
1
Kounosuke Tomori
1
1東京工科大学
pp.747-750
発行日 2021年7月20日
Published Date 2021/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001202598
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目標設定の実際
先行研究を概観すると,残念ながら目標設定がしっかりできているという報告はほとんど見当たらない.Maitraら1)は,OTと対象者にそれぞれ目標設定に関する調査を行い,両者の認識のズレを指摘している.たとえば,OTの100%は作業療法の役割を対象者に説明したと回答しているが,対象者の40%は説明をまったく受けていないと回答し,またOTの90%が対象者を目標設定に参加させたと回答するも,対象者の46%は目標設定にまったくかかわっていないと回答している1).同様にSaitoら2)も,回復期リハ病棟で調査を行っている.その結果によると,78%のOTは対象者に目標の説明を行った,対象者の86%は説明を受けた,と回答していたにもかかわらず,両者の認識する目標の一致度は17%で,40%はまったく一致していなかったと報告している2).
これらの結果からも,OTは対象者に説明したと認識していても,OTと対象者が同じ方向を向いて作業療法を進めているとはいいがたい現状が,今でもかなり多くの割合で存在すると推察される.「対象者とOTの目標の認識にはズレが生じやすい」ということをしっかりと理解したうえで,対象者に目標を日々確認していくようにしたい.
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