連載 脳損傷者への就労支援—対象者のデータベース化と多職種による支援の試み・第9回
高次脳機能障害者の就労状況実態追跡調査—高次脳機能障害の職場定着に向けたMSW実践報告
西原 大助
1
,
武原 格
1
,
堀田 富士子
1
Daisuke Nishihara
1
,
Itaru Takehara
1
,
Fujiko Hotta
1
1東京都リハビリテーション病院
pp.1300-1304
発行日 2020年11月15日
Published Date 2020/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001202313
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はじめに
筆者らが行った「高次脳機能障害者の就労状況 実態追跡調査(2014年)」の職場訪問調査において,就労定着には職場の障害への理解や,指導者のサポート力等の環境要因が大きく影響する可能性が示唆された.また,環境要因が指す事柄は,制度や支援体制といった安定したものではなく,指導者個人の力量に頼った不安定な環境の中で就労定着が行われている実態がある.ジョブコーチ等,就労支援者の積極的な働きかけや,職場末端の指導者にまで注意を払い,就労定着に向けてサポートが行われているか継続支援していくことも重要であると実感した.
高次脳機能障害者の就労定着支援について,渡邉1)は,たとえ就職できてもその状況を維持しにくいという特徴があり,ジョブコーチ等の就労支援体制が充実していれば,職場に対して理解と対応方法を指導し,就労が維持できる可能性があるとしている.また,長く働き続けるためには,職場側への支援,仕事を再開した後も必要なときに支援が受けられる仕組みをつくる必要があると述べている.この渡邉が指摘する,「就労支援が必要なときに支援が受けられる仕組みをつくる」ことについて,本調査で職場訪問を実施した1事例を基に,就労定着に向けた医療ソーシャルワーカー(以下,MSW)実践を報告する.
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