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Key Questions
Q1:小脳失調症状のメカニズムとは?
Q2:小脳失調症に対する客観的評価とは?
Q3:失調症患者のADL評価で考慮すべきポイントは?
小脳性失調症状のメカニズムと生活障害
運動失調症状を呈する疾患の中で,その原因が,腫瘍,血管障害(脳梗塞や脳出血),炎症(小脳炎,多発性硬化症),栄養障害のいずれでもない疾患を脊髄小脳失調症(spinocerebellar degeneration:SCD)と総称し,多系統萎縮症(multiple system atrophy:MSA)の一部も脊髄小脳変性症とされている1).多系統萎縮症を含めて,脊髄小脳変性症の患者は全国で4万人を超えているとされ2),OTがかかわる機会は少なくない.SCDはいずれの病型においても小脳性運動失調症状を呈するため2),小脳機能と障害モデルを理解することが評価の最初の手順となる.作業療法場面においては,運動失調症は主として協調運動障害として捉えられてきたが,1990年代にSchmahmannら3)によって,小脳性認知情動症候群(cerebellar cognitive affective syndrome:CCAS)として小脳が認知機能や情動の制御にかかわっていることが報告され,ADL評価の重要性が注目されるようになった.そのためOTが行う生活評価は,運動と認知の両面から捉える必要がある.
小脳による運動制御は順モデル,逆モデルという2つの仕組み(内部モデル)で行われると考えられている.順モデルはあらかじめ誤差を予想して,運動の遂行前に運動指令の修正を行うものであり,逆モデルとは,あらかじめ誤差を最低限にする指令を形成するものである4).小脳はこの内部モデルによって誤差を感知し,修正を繰り返していくことで,時間的なタイミングや方向や距離といった空間的な協調をとるための制御を行っているとされる.小脳が損傷されると,この内部モデルに基づいた誤差修正が行えず,視覚や体性感覚を用いたフィードバック機構による制御が主となるため,動作の開始が遅延したり,目標の場所からずれてしまうdysmetriaが出現する.
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