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Key Questions
Q1:矯正施設における境界知能の青年,成人の現状とは?
Q2:コグトレプログラムとは?
Q3:司法領域におけるOTの役割や関与の可能性とは?
はじめに
日本の矯正施設における一般就労や障害者への社会復帰体制については,ハローワークとの連携等,すでにさまざまな対策が講じられ,充実・強化が図られてきている.しかし,発達障害等の傾向を示す者(境界知能:borderline intellectual functioning:BIF)への特別な支援は,どのような介入プログラムが,どの程度効果的か等,実証的に検証されていない.
筆者らは,2013年(平成25年)から宮川医療少年院で外部講師として非行少年の社会復帰プログラムの一部を作成,効果検証し,課題を明確化するとともに一定の効果を確認してきた.非行少年への認知行動療法やソーシャルスキルトレーニングは,多くの先行研究からその効果が検証されてきているが,一方でいくら指導しても効果が深まらない少年たちの存在にも苦慮させられている.その中には,視覚認知,聴覚認知,概念力,ワーキングメモリ等,さまざまな認知機能に問題のあるケースも多い.矯正教育の成果を上げるためには,ある程度の知的機能が保たれていることが前提となる.
このような課題に対して,医師やOT等,医療・保健領域の専門職の関与が必要であるが,診断がない場合は医療・保健の専門家がかかわる機会はほとんどないのが現状である.周囲からその困難さが気づかれにくいBIFの子どもや青年,成人は“忘れられた障害”ともいわれており,学校教育や就労等の場面で不利益に遭う場面は少なくない.
以上の背景を踏まえ,筆者らは2019年(令和元年)から再犯防止推進計画に基づく新たな施策として,広島保護観察所の協力を得ながら,広島刑務所と広島少年院で,BIFを対象に認知機能向上を目的とした介入研究(広島モデル)を継続している.本稿では,研究の概要と事例を通じたかかわりの実際と効果について述べる.
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