- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
2005年(平成17年)7月,「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」(以下,医療観察法)の施行に伴い,指定医療機関(入院・通院)にOTが配置されるようになり,司法領域における精神科作業療法が本格的に展開されるようになった.いわゆる触法精神障害者に対する社会復帰の促進のための取り組みである.
この動きから2年後の2007年(平成19年)に監獄法が廃止され,「刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律」が現名称の「刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律」(以下,刑事収容施設法)に改正された影響もあり,刑務所等の矯正施設においては,OTが非常勤職員(外部講師等)として,受刑者の社会復帰に関与してきた.そして,2019年度(令和元年度)から,いくつかの刑務所等の矯正施設において,常勤OTの採用が開始されはじめている.矯正施設においては,さまざまな疾患や障害を抱える受刑者の多様化や高齢化等の課題があり,常勤OTの採用の動きは,その対策でもある.OTによる効果的なかかわりが期待されているのである.
筆者は,民間の精神科病院での勤務経験を経て,法務省の保護観察所において社会復帰調整官として医療観察対象者にかかわり,現在は,保護観察官として保護観察対象者にかかわっている.
本稿では,「刑事司法・触法領域の作業療法」として,まず,刑事司法手続きの流れと各領域の作業療法の対象や状況を確認する.そのうえで,刑務所等の矯正施設におけるOTの取り組みに焦点を当てて展開したい.また,矯正施設出所後の更生と地域生活の支援を担う保護観察所において,筆者のようにOTの保護観察官が誕生していることにも触れることとしたい.なお,本稿における意見に関する部分は筆者の私見である.
Copyright © 2020, MIWA-SHOTEN Ltd., All rights reserved.