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事例提示
A氏,70代前半,男性.現役時代は工場勤務,引退後は庭仕事や農業等を行っていた
家族:妻と二人暮らし.長男(ケアマネジャー)家族が近所に在住.妻は10年前に親の介護をしたときにうつ病を発症し,A氏発症後,抑うつ的になった
現病歴:X年Y月発熱でA病院受診.血液検査で異常を認め,精査目的で当院血液内科に紹介.X年Y+1月急性骨髄性白血病と診断.治療について,①造血幹細胞移植,②化学療法,③支持療法の説明が行われ,移植希望はなく通院での支持療法を希望された.X年Y+3月発熱あり,当院入院加療となる
経過(表):今後の治療について決断された時期(Y+3月)
高熱が続き,現在の状況の厳しさを自覚されており,妻やみんなに迷惑はかけたくないと涙されていた.作業療法介入の中で希望を問うと,「必要なことはすべてやり尽くしたと思っている.やり残したことはないので,希望はないです.体力は維持したいですね」と話された.当初は治療をせずに支持療法で対応したいとのことだったが,無理のない範囲で治療し,元気なうちは妻を支えてやりたいとの考えから化学療法を行うことを決断され,一時退院となった
治療が開始され,目標を検討した時期(Y+4月)
一時退院は気分転換になったと話された.あらためて希望を問うが,「治療を頑張っているが,その先の目標がない.やりたいことはやり切った」との言葉が続いていた.数日後,作業療法中に家に農業用の機械が多くあると話された.今後,機械をどうしていくのかお訊きすると,「息子に使い方を教えておかないと」と話されため,退院時にご家族に農業機械や家の扱い等を伝えていくことを提案した
月1回,1週間の治療入院が開始となった時期(Y+5〜7月)
1週間入院し化学療法を行い,3週間家で過ごすというスケジュールで治療が開始された.退院時は,家の作業ができたが,発熱の不安もあるためこれまでのように思い切ってできないこと等,ストレスもあったと話された.妻はA氏が帰宅すると少し元気になっていたと話された.「息子には道具の使い方だけでなく,家のこと,お金のこと等も話ができた」,「機械に関することは4/10くらいは伝えられたけど,それ以上は自分の仕事もあるだろうから」と話された
感染症により緊急入院された時期(Y+8月)
家での作業後に発熱と貧血症状が出現したため,緊急入院された.その後,症状が落ち着いてきた時期に心理士の介入の中で,「前は鍛えれば筋肉になるって頑張れたけど,今はリハもしないほうがいいのかと思う.やってやるぞという自分と,やらんほうがいいかっていう自分のバランスが難しい.以前の自分のイメージと違ってしまったから余計に落ち込んだ」との言葉が聞かれていた
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