昭和の暮らし・第32回
鯨のひげ
市橋 芳則
1
1北名古屋市歴史民俗資料館
pp.1020
発行日 2019年8月15日
Published Date 2019/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001201843
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釣り竿の穂先は,近年ではグラスファイバーやカーボン等の素材が一般的である.釣り針にかかる際の魚の当たりは繊細で,微妙な竿先の変化や,釣り糸を通して手元に伝わる捕食の瞬間を神経を研ぎ澄ませて感じとる.
写真の釣り竿の穂先は,ワカサギ釣り用のもので,こうした繊細な当たりを感じ取るために鯨のひげを竿状に加工したものである.昭和30年ごろのもので,ワカサギ釣りの盛んな長野県の釣具店に残っていた.鯨のひげは,細く竹ひご状態に加工すると強い反発力を生み出す優れた素材として古くから利用されてきた.カラクリ人形等の動力となるゼンマイや,西洋では落下傘状に広がるスカートの芯や工芸品に加工された.
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