Japanese
English
特集 統合失調症の予後改善に向けての新たな戦略
薬物療法による予後改善―認知改善薬を中心に
Improvement of Prognosis in Schizophrenia with Therapeutic Drugs: Focus on cognition
吉田 泰介
1,2
,
伊豫 雅臣
2
,
橋本 謙二
1
Taisuke YOSHIDA
1,2
,
Masaomi IYO
2
,
Kenji HASHIMOTO
1
1千葉大学社会精神保健教育研究センター・病態解析研究部門
2千葉大学大学院医学研究科精神医学
1Division of Clinical Neuroscience, Chiba University Center for Forensic Mental Health, Chiba, Japan
2Department of Psychiatry, Chiba University Graduate School of Medicine
キーワード:
Schizophrenia
,
Cognition
,
Glutamate
,
Sigma-1 receptor
,
Neurotrophic drugs
Keyword:
Schizophrenia
,
Cognition
,
Glutamate
,
Sigma-1 receptor
,
Neurotrophic drugs
pp.127-134
発行日 2011年2月15日
Published Date 2011/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405101787
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はじめに
統合失調症は陽性症状,陰性症状,認知機能障害などを症状とする慢性疾患であるが,近年それらの症状の中でも認知機能障害が注目を集めている。というのも,認知機能障害が,就職や自立した生活などの社会機能と密接な関連があるということが明らかになってきたからである。そのため現在,認知機能障害は,統合失調症患者の予後改善を目指した薬物療法の主要な治療目標の1つとなっている。
ドパミンD2受容体遮断作用を持つ定型抗精神病薬は,陽性症状に関してはある程度効果を挙げたものの,陰性症状,認知機能障害に対しての効果は不十分であった。その後出現した非定型抗精神病薬はD2受容体の遮断作用以外にもセロトニン5-HT2A受容体遮断作用などを有し,錐体外路系障害の頻度は少ない。しかし認知機能障害への効果については,大規模臨床試験では,定型薬と比べて変化はないという報告が多い。このため,認知機能障害改善のためにはD2受容体以外の新規な作用メカニズムを有する薬剤の開発が必要であると考えられている。本稿ではそのような治療のターゲットとして,グルタミン酸受容体,シグマ-1受容体および神経栄養作用に関与する薬剤について触れ,現在までの臨床試験の結果をまとめる。
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