- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
ここ最近で,「発達障害」という言葉を耳にする機会が増えてきました.身体に加えて,精神にかかわる障害の支援にも携わるOTの皆さまの中には,発達障害を抱える当事者に対する支援をしている方もおられることでしょう.
しかし,発達障害はここ数年で急速に知られることとなった言葉であるため,現在はその理解が一般の方にも進みつつある段階であり,まだまだ誤解や偏見が多いことを一当事者として感じております.
したがって,本稿では発達障害の分類の一つである自閉スペクトラム症(ASD)当事者である私の立場から,当事者はどのような支援をOTの皆さまに求めるかを考えます.
発達障害は,「発達凸凹」という言葉が使われるほど,凸凹が激しい特徴を伴うことがあることが知られております.凸は得意なこと,凹は苦手なことを表しております.
たとえば当事者である私も,顕著な凸凹を抱えております.語学力や1人で行う作業には周りの方々の定評をいただき,得意なことである凸といえる一方,運動能力や複数人で行う作業における能力は著しく欠如しており,凹といえます.
この凸凹の具合は,誰一人として同じではありません.たとえば私と同じASDの傾向にある方々の中でも,私にとっての凸である語学力が凹である一方,私にとっての凹である運動能力が凸であり,才能を発揮する方々もおられます.
この「凸凹」という概念は,発達障害関係なしに,誰にでも存在するものと私は考えております.十人いれば,十通りの凸凹があるのです.十人十色という言葉があるように,十人十凸凹といえるでしょう.
その中で本稿では,発達障害ではない方々に比べて凸凹の具合が激しいゆえに,この社会で生きていくうえで困難を抱えることがある当事者に対する支援を例として,すべての患者さんの凸凹に応じた支援をすることの重要性について考えていきます.
Copyright © 2018, MIWA-SHOTEN Ltd., All rights reserved.