■特集 作業療法の倫理を問う
作業療法士協会の立場から
荻原 喜茂
1,2
1国際医療福祉大学保健学部
2社団法人日本作業療法士協会事務局
pp.206-209
発行日 2002年6月15日
Published Date 2002/6/15
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はじめに
日本作業療法士協会は,1966年協会設立から15年後の1981年に社団法人として認可された.もとより,一人の人間が国家資格を付与された時点で,その者は求められる社会的要請において,“個と公との均衡ある関係性の維持,発展”を責務とする存在になると思う.それ故,社団法人とは,その責務を意識する者達がさらに大きな社会的要請に答えるべく,力を集めたものといえる.しかし,Popper1)も指摘しているように,このような責務がつねに誤りなく果たせられることが自明の理となっているかについては,敏感かつ自覚的な点検が必要となろう.
最近の作業療法(士)に関わる“誤り”の例として,名義貸し行為の問題,雇用契約不履行的行為の問題,診療報酬不正請求に関連した問題,セクシャルハラスメントの問題,などがあげられる.このような問題は,基本的には個人あるいは個の集まりが引き起こしているものではあるが,その影響は他の作業療法士達,さらには協会の姿勢そのものに直接大きな影響を及ぼすことになる.“個と公との均衡ある関係性”が崩れた瞬間でもあり,社会的要請(そこには一人の対象者の切なる願いが横たわっている)の声を裏切っていく契機でもある.
本論では,倫理に関する社団法人日本作業療法士協会(以下,協会)の取り組みを確認する.そのことで,自らも含めて一人一人が,自覚的に“誤り”を回避していく機会になればと思う.
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