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編集後記
江藤 文夫
pp.1246
発行日 2017年11月15日
Published Date 2017/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001201123
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今月の特集テーマに関連して,漢語の素養を退行させた現代日本語の「リハビリテーション」では,かつて訳語として普及した「更生」のイメージも大切にしたいものである.古代の日本列島では,中国大陸との交流が盛んになると漢字という文字を借用駆使して日本語を表記するようになった.万葉仮名と総称され,大伴旅人の有名な讃酒の歌13首を含む『万葉集』も漢字で書かれているが,読み方次第で微妙に解釈が異なる.
長与専斎の述懐で有名な「明治19年の頓挫」で,わが国の衛生行政は衛生警察による取り締まりが徹底され,ある種の感染症や精神障害では犯罪のイメージが浸透し,治療の対象ではなく,収容隔離の対象とされてきた.20世紀半ばにrehabilitationが医療や福祉で普及したころ,作業療法は精神病院で発達した歴史を有するが,残念ながらわが国では初期の歴史を共有しない.本特集でも触れられているが,依存症を嫌うOTが少なくないという.依存症は病気であり,第一に治療の対象と考えるべきであろう.処罰を第一に考えると,再犯か自死を増やすことが懸念される.最も古くから知られるアルコール依存症を取り上げた本特集の執筆者は幸いなことに,自助グループの紹介を除いてすべてOTである.アルコール依存に対する処遇の現状ではやむを得ないが,薬物依存はもとよりプロセス依存,関係依存等でも医療職がかかわる必要がある.
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