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Key Questions
Q1:OTが地域で緩和ケアにかかわるために,何をすればよいか?
Q2:子どもの緩和ケアを行ううえで必要なことは?
Q3:慢性疾患の子どもたちから学んだことは?
はじめに
発達領域の作業療法の対象は,脳性麻痺を中心とした肢体不自由児から,重症心身障害児,発達障害児と対象が広がり,訪問看護ステーションや児童発達支援等,地域での子育て支援にかかわるようになってさらに広がっている.そこでは悪性新生物や難病,小児慢性特定疾患等の在宅の障害児に出会うことが多くなり,出生時からの心臓疾患や内部障害等がありながら,臓器移植や先進医療で生存可能になった子どもたちが,保育所や幼稚園に進んで成長していく姿に出会う.家族で危機を乗り越え,命と向き合いながら生きている子どもたちとの出会いから,今までの作業療法を見直すことができた.「緩和ケア」が,がんに代表される命と向き合い,生きることに寄り添う医療なら,多くの子どもたちに作業療法が必要だ1).
生命を脅かす疾患をもつ子どものための緩和ケアは,「身体的,精神的,社会的,スピリチュアルな要素を含む包括的かつ積極的な取り組みである.それは子どものQOLの向上と家族のサポートに焦点を当て,苦痛を与える症状の管理,レスパイトケア,終末期のケア,死別後のケアの提供を含むものである」2)と定義されている.生命を制限もしくは脅かす疾患は,①根治療法が功を奏し得る病態(小児がん,心疾患等),②早期の死は避けられないが,治療による延命が可能な病態(神経筋疾患等),③進行性の病態で,治療はおおむね症状の緩和に限られる病態(代謝性疾患,染色体異常等),④不可逆的な重度の障害を伴う非進行性の病態(重度脳性麻痺等)とされる3).出生時の事故や病気直後の命の危機から脱したとしても,将来に対する不安は大きく,子どもや家族の心に大きな傷が引き続き残っていることもある.子どもの病気や命にかかわる大きな障害は,親のこころや家族の絆にも影響を与える.しかし,当事者である子どもたちは,たとえ幼くても日々の命を精いっぱい生きており,驚くほどに前向きで,人間として完成されているとさえ感じる.
発達領域の作業療法に大きな影響を与えたMary Reillyは,社会科学者M. Brewster Smithに出会い,内発的動機と有能性の重要性を知り,自尊心や希望に満ちた態度が有能性と強く関連していること,また,人間は尊厳を保って自分の生活を積極的に構築することができると提言した4).まさしく,重い障害をもつ子どもたちも,今日を生きており,OTの支援を必要としている.OTは,あらためて子どもの生活と人生にかかわる自分たちの役割と,子どもに必要な「作業」とは何なのかを考え,「緩和ケア」の視点に立って,自分たちの作業療法のあり方を学び直したい.
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