ちょっと一言 総婦長のつぶやき
たとえ言葉は通じなくとも
神郡 博
1
1国立下総療着所
pp.321
発行日 1985年3月1日
Published Date 1985/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661921033
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最近私の病院に1人の外国人が入院することになった.たまたま帰国の途上成田空港で精神に異常を来したのである.人種や国籍を超えて病む人の治療に当たるのは,医療の建て前として至極当然のことである.しかし,患者が日本語はもちろん英語も話せないコロンビア人であること,そして精神が錯乱状態にあることが医療や看護を余計難しくしていた.
言葉が全く通じなかったら,治療も看護もできないという不安.これはまさに深刻であった.他の科ならともかく,言葉による意思の伝達が重要な精神科では,それができないことは致命的である.これはだれしもが思い浮かべることであった.しかし,患者が発生したという事実が,予想されるすべての困難に優先した.
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