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Key Questions
Q1:脳損傷対象者の終末期とは?
Q2:緩和ケアの視点からみた,終末期の脳損傷対象者に対する作業療法とは?
Q3:対象者に対する具体的な支援とは?
はじめに
脳損傷対象者への作業療法では,発症・受傷直後の急性期から機能回復を図る回復期,自身の生活を再構築する生活期を経て,人生の締めくくりの終末期まで支援し続ける.どのようなアプローチが求められるかは,対象者の状態や時期によって異なる(図11)).特に終末期の対象者は,脳損傷の後遺症として運動麻痺や感覚障害,高次脳機能障害が残存し,比較的長期の経過をたどる対象者も多く,その経過の中ではさまざまな内科疾患も重複し,廃用症候群等の二次的障害の発生も多くみられる.
大田2)は,終末期リハについて,終末期の前に介護期があるとしながら,「加齢や障害の進行のため,自分の力で身の保全が難しく,かつ生命の存続が危ぶまれる人々に対して,最期まで人間らしくあるよう医療,介護,介護と共に行うリハビリテーション活動」と定義し,「生物(動物)としての人間として」ではなく,「尊厳ある人間として」扱われているかどうかが問われると述べている.しかしながら日ごろの臨床では,算定日数の制限により提供できる単位数は限られ,目に見えぬとも刻々と変化する全身状態に対して“体が硬くならないこと”,“介助量が増えないこと”等の対象者の身体状態の維持に追われていることも多い.生命の危機的状況にある対象者ではあるが,最期まで「その人らしく」あり続けるために,私たちは具体的にどのような作業療法を展開していけばいいのであろうか.
そこで本稿では,緩和ケアの視点から脳損傷対象者の終末期のアプローチについて再考したので,1症例を通じて報告する.
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