増刊号 脳卒中の作業療法―支援技術から他職種連携・制度の利用まで
第2章 支援技術Ⅰ 急性期から回復期の基礎
1 How to タッチ ③脳卒中片麻痺患者の肩の痛み
野間 知一
1
,
栄 秀和
2
,
松元 秀次
3
,
下堂薗 恵
3
Tomokazu Noma
1
,
Hidekazu Sakae
2
,
Shuji Matsumoto
3
,
Megumi Shimodozono
3
1鹿児島大学医学部・歯学部附属病院 霧島リハビリテーションセンター
2垂水市立医療センター 垂水中央病院
3鹿児島大学大学院 リハビリテーション医学
pp.583-588
発行日 2014年6月20日
Published Date 2014/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001100541
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はじめに
脳卒中片麻痺患者の合併症の一つに肩の痛みがある.発生率は報告によって異なるが,脳卒中片麻痺患者1,000名を対象とした大規模な調査1)で発生率が55%と想像以上に多いことが明らかにされた.肩の痛みの発生や変化を経時的に調べた前向き研究2)では,肩の痛みを合併した患者のうち脳卒中発症から2週までに28%の患者が,4カ月までに87%の患者が痛みを経験していた.その後,肩の痛みは改善傾向にあったが,6カ月時点では肩の痛みを合併した患者のうち20%に肩の痛みが残存していた2).肩の痛みの残存した慢性期片麻痺患者は,それが原因で著しくQOLが低下すると報告されている3).
肩の痛みが発生しはじめる時期と急性期,回復期リハにおける積極的な上肢リハや更衣,移乗等のADL訓練,歩行訓練が始まる時期が重なることから,OTを含めたリハ専門職の責任は大きい.一方で,肩の痛みが長期化すれば,リハ専門職は患者からの信頼を失いかねず,場合によっては本来の肩の痛みや運動機能改善を目標とした積極的なリハができず,安易なマッサージに終始してしまうことにもなり得る.したがって脳卒中片麻痺患者の肩の痛みは,患者とOTにとって大きな問題といえる.
本稿では,これまでの脳卒中片麻痺患者の肩の痛みに関する報告を基に,痛みの原因を整理するとともに,そのリハについてわれわれの取り組みを踏まえて述べる.なおcomplex regional pain syndrome(CRPS)に関しては他稿へ譲る.
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