特集 心臓血管外科領域における内視鏡下手術
〔エディトリアル〕心臓血管外科領域における内視鏡下手術の現況
尾本 良三
1
1埼玉医科大学第1外科
pp.264-268
発行日 1998年8月15日
Published Date 1998/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.4425900206
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低侵襲心臓手術と内視鏡下手術とのかかわり
過去10年間にわたって,入院コストの削減,外科侵襲の軽減,美容的効果の3つを主な目的として低侵襲心臓外科手術(minimally invasive car-diac surgery)の研究が強力に進められてきた.低侵襲心臓手術をめざす方法には歴史的には大きな2つの流れから出発している.1つは体外循環を用いない手術術式(off-pump)で,主として冠動脈バイパス手術(CABG)に応用されてきた.もう1つは体外循環を用いるもので,内視鏡を最大限に利用する場合(video-assisted)とそうでない場合とがあるが,いずれにしろ手術創を小さくする努力がなされている.この場合は心内操作が可能であり,当然のことながらCABGのみならず弁膜症手術や上行大動脈手術,あるいは先天性心疾患の手術も可能となる.
体外循環を用いない方法では,体外循環による血液ダメージの回避,ヘパリン化による出血傾向の回避,感染機会の軽減というメリットがある.当然のこととして,体外循環を用いないので手術時間が短縮され,在院日数は短縮し,かつコストも安くすむといわれている.ただこのことに関しては,本当に手術時間が短縮されるのかという疑問があるし,また心拍動下で行う吻合操作の困難さから,手術早期の吻合部狭窄の危険が高いのではないかとの反論もある.
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