特集 図解 成人鼠径ヘルニア手術
[エディトリアル]成人鼠径ヘルニア手術の現況
長町 幸雄
1
Yukio NAGAMACHI
1
1群馬大学医学部第1外科
pp.821-823
発行日 1996年7月20日
Published Date 1996/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407902336
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はじめに
歴史的にみて,鼠径ヘルニアに対する術式は多数あり,ことに術者の名を冠したものが多い.成人の場合には鼠径部の正確な解剖に基づいた理論的・合理的な術式が選択され,小児に行われる“simple herniorrhaphy”などとは一線を画している.成人,ことに高齢者では鼠径部の靱帯構造が脆弱化しており,生理的に備わった防護壁としての機能を失っている場合が多い.したがって,横筋筋膜(transversalis fascia)や腸骨恥骨靱帯(iliopubic tract)やCooper靱帯および鼠径靱帯(inguinal ligament)などを用いた鼠径管後壁補強法がヘルニアに対する標準的な根治術式となっている.多数ある術式のすべてに対し,優劣を1人の外科医が追試して確かめ,比較検討することは不可能であり,またそのような報告に接したこともない.外科医は,各自が得意とする手術を慣用しているのが実情であろう.筆者も10種以上の術式を知っているが,実際にそれらの術式すべてを自ら実施し,その結果を比較検討したことはない.日常の臨床で用いている手術は,手馴れた数種類に過ぎない.年齢別・術式別に調べた鼠径ヘルニアの手術術式では,成人に対してPotts法,Czerny法,Lucas-Championnière法などの術式は全く用いておらず,Ferguson法などもほとんど用いていない.
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