別冊秋号 オピオイド
PART2 基礎編
30 μオピオイド受容体とがん病態
葛巻 直子
1,2
,
成田 年
1,2
1星薬科大学 薬理学研究室
2国立がん研究センター研究所 がん患者病態生理研究分野
pp.195-200
発行日 2022年9月15日
Published Date 2022/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3104200312
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オピオイド鎮痛薬は,がん疼痛をはじめとした難治性の疼痛制御に欠かせない。現在までに,モルヒネ,フェンタニル,オキシコドン,タペンタドールあるいはヒドロモルフォンなど,多くのオピオイド鎮痛薬が開発,精製され,それらの使用法が確立されている。これらの主な作用点はμオピオイド受容体(以下,μ受容体)である。中枢のμ受容体の刺激により,強力な鎮痛作用を発揮する。一方,末梢に存在するμ受容体を介しては,便秘や悪心などの消化管障害を生じる。こうしたμ受容体作動薬による多彩な薬理作用は,生体内におけるμ受容体の幅広い分布によって説明できるため,中枢性ならびに末梢性μ受容体の生理的応答をしっかりと整理し,それぞれの役割を十分に理解する必要がある。また,μ受容体は,がん細胞や免疫細胞にも存在していることが明らかになってきており,μ受容体に対する“修飾”が全身性免疫やがん病態に影響を及ぼすことは容易に想像できる。
そこで本稿は,がん細胞の増殖制御にかかわるμ受容体の役割について,最近の報告を踏まえて概説する。
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