特集 伝達物質と受容体
4.ペプチド
オピオイド
ブトルファノールの鎮痛効果とオピオイド受容体
井手 聡一郎
1
,
南 雅文
1
,
池田 和隆
2
Soichiro Ide
1
,
Masabumi Minami
1
,
Kazutaka Ikeda
2
1北海道大学大学院薬学研究院薬理学研究室
2(財)東京都医学研究機構東京都精神医学総合研究所精神生物学研究分野
pp.456-457
発行日 2009年10月15日
Published Date 2009/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425100916
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[用いられた物質/研究対象となった受容体]
酒石酸ブトルファノール/オピオイド受容体
痛みは生体防御警告系として重要な役割を果たしているが,過剰な痛みや慢性的疼痛は患者の生活の質(QOL:Quality of life)を著しく低下させるため,現在では治療すべき疾患の一つとして認識されている。モルヒネをはじめとした各種オピオイド鎮痛薬は,1986年に世界保健機構(WHO)が,がん性疼痛を緩和することを目的として公表したWHO方式がん疼痛治療法で示されるWHO方式3段階除痛ラダーにおいて,第2段階から第3段階の疼痛治療に用いられている。また,オピオイド鎮痛薬はがん性疼痛のみならず他の激しい痛みを伴う疾患や術後の疼痛管理においても用いられている。
オピオイド系は,内因性オピオイドペプチドファミリーとμ,δ,κと名付けられた三種の受容体サブタイプとから成り立ち,鎮痛をはじめとして広範な生理機能の調節に関わっている。オピオイド鎮痛薬に関する研究においては,モルヒネやフェンタニルなどのμオピオイド受容体完全作動薬に関する研究が多くなされている一方で,本邦で臨床使用されている他のオピオイド鎮痛薬の多く,特にμオピオイド受容体部分作動薬であるオピオイド拮抗性鎮痛薬に関しては研究が少なく,未だにその作用機序や作用特性に不明瞭な点が多く残されたまま使用されている。
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