特集 伝達物質と受容体
4.ペプチド
オピオイド
μオピオイド受容体とモルヒネ抵抗性
徳山 尚吾
1
Shogo Tokuyama
1
1神戸学院大学薬学部臨床薬学研究室
pp.462-463
発行日 2009年10月15日
Published Date 2009/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425100919
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●μオピオイド受容体を介した鎮痛作用の発現とその脱感作機構
オピオイド受容体は薬理学的な分類によってμ,δおよびκ受容体に大別される。いずれの受容体も7回膜貫通型のGタンパク質共役型受容体(GPCR)である。一般的に,モルヒネの作用部位であるμオピオイド受容体はアゴニスト刺激により受容体が活性化されると,百日咳毒素感受性のGタンパク質であるGi/Goを介して,アデニル酸シクラーゼの抑制,Ca2+チャネルの開口抑制およびK+チャネルの開口促進による抑制性の神経伝達を誘導することで鎮痛作用を発現する(図)。
μオピオイド受容体を介した中枢性鎮痛作用は,一次神経終末において,μオピオイド受容体の刺激によるサブスタンスPやカルシトニン遺伝子関連ペプチドおよびグルタミン酸などの痛覚伝達物質の遊離を抑制,あるいは脊髄後角神経において,直接の後シナプス抑制による上位中枢への痛覚伝達の遮断によって発現する。中脳水道周囲灰白質では,抑制性の神経であるγアミノ酪酸(GABA)神経系に存在するμオピオイド受容体に作用し,GABA神経系を抑制することで,これらの領域から脊髄に投射する下行性のセロトニンやノルアドレナリン神経系を間接的に活性化し,脊髄後角の痛覚伝達を遮断する。さらに,視床中継核,視床下部,大脳知覚領に存在するμオピオイド受容体を介して直接痛覚伝達を遮断し,鎮痛作用を発現する機構が知られている。
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