別冊春号 2022のシェヘラザードたち
第24夜 なんでわかってくれない…!?—俯瞰的な視点・思考のススメ
松本 禎久
1
1国立がん研究センター東病院 緩和医療科
pp.135-139
発行日 2022年4月15日
Published Date 2022/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3104200279
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この度「シェヘラザードたち」の依頼を受け,どのようなお話しをしようかいろいろと考えた。
がん疼痛に対して高用量のオピオイドを使用している患者に生じた呼吸抑制に慌てた内科医がナロキソン1アンプルをボーラス投与して患者にとって地獄のような時間となった場面に立ち会ったこと……,がん疼痛に対するくも膜下鎮痛でオピオイド誘発性痛覚過敏を生じさせ患者にむしろ強い苦痛を与えてしまったこと……,教訓的な経験は多数ある。しかしながら,麻酔科をベースとして緩和医療に主に携わる医師となった私がこれまで多くのがん患者とその家族とかかわってきた中で,最も苦い経験として今も鮮明に記憶に残る事例を紹介することにした。私自身の医師としての現在のあり方に大きな影響を与えているこの経験をお伝えすることで,今後,患者・家族とのかかわりで悩んだときに少しは役立つこともあるのではないかと期待する(疾患の経過などには一部フィクションの部分もある)。
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