別冊秋号 疼痛と鎮痛
Part Ⅰ 痛みを感じるメカニズム
4 痛みを修飾する脊髄後角介在神経のNMDA受容体の役割
塩川 浩輝
1
1九州大学病院 麻酔科蘇生科
pp.31-37
発行日 2018年9月20日
Published Date 2018/9/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3104200030
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■臨床の視点
▲脊髄後角のNMDA受容体はアロディニアにどのようにかかわるか?
慢性疼痛患者では,痛み閾値の低下による痛覚過敏だけでなく,触刺激でも痛みを感じるアロディニア症状を訴えることがある。アロディニアのメカニズムとして末梢神経や中枢神経の感作などが考えられているが,不明な点も多い。中枢性感作の機序の1つとして,NMDA(N-メチル-D-アスパラギン酸)型グルタミン酸受容体の活性化が知られている。したがって,NMDA受容体を標的としたアロディニア症状に対する治療戦略が考えられる。
麻酔科医にとってはNMDA受容体を拮抗する薬物として,ケタミンがなじみ深い。ケタミンは手術麻酔に使用されるのみならず,ペインクリニックの臨床現場において,低用量の静脈投与で慢性疼痛患者のアロディニア症状を改善させることが知られている1)。しかし,ケタミンは幻覚などの副作用があり,現在麻薬指定されていることもあって,その使用は限られる。一般家庭で使用できるようなケタミンの内服薬は市販されておらず,ケタミン以外にNMDA受容体拮抗作用が報告されているデキストロメトルファン(メジコン®),アマンタジン,メマンチン(メマリー®)などは,いずれもアロディニア抑制の効果は強くない印象がある。
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