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■臨床の視点
▲侵害受容伝達における脊髄後角ニューロンのGABAA受容体介在性抑制性電流の役割とは?
神経障害性疼痛は外傷や手術後,脊椎疾患など,何らかの原因により障害を受けた神経が過剰に反応することで引き起こされる痛みである。ペインクリニックの分野では対峙する頻度が高く,神経ブロックや各種の鎮痛薬を併用しても難治性であることが多い。神経障害性疼痛の発症および増悪のメカニズムはさまざまな研究が進められているが,末梢神経から脊髄神経,脳神経と複雑に絡み合うため,未解明な部分が多い。それらの詳細な解明にもとづいた,メカニズムに沿った治療法の確立が期待される。
脊髄後角は末梢からの痛み刺激(侵害刺激)が入力され,大脳に伝達する中継所としての役割を果たしている1)。脊髄後角ニューロンにおける神経伝達には興奮性と抑制性が存在し,両者のバランスのうえで成り立っている。
γ-アミノ酪酸(GABA)を作動薬とするGABAA受容体は,Cl-を細胞内に流入させるチャネル構造を有し,細胞を過分極させることで活動電位の発生を抑制して細胞の興奮を抑える抑制性神経伝達の代表的な受容体である。GABAA受容体を介する抑制性神経伝達の機能異常が,神経障害性疼痛に関与していることが明らかにされている2)。GABAA受容体を介したCl-の流入により細胞に発生する電流には,一過性にCl-チャネルが開口することで発生するphasic電流と,持続性にチャネルが開口することで発生するtonic電流の2種類が存在する。tonic電流は持続性のため,抑制性神経伝達に寄与するインパクトが大きい。近年,大脳においてtonic電流がてんかんの原因やアルコール,麻酔薬の作用メカニズムなどに重要な役割を果たしていることが明らかにされ,注目されている3〜5)。脊髄後角ニューロンでもtonic電流の存在が明らかにされたが,その生理学的役割は明らかになっていない。そこで神経障害性疼痛モデルマウスを用い,脊髄後角膠様質(substantia gelatinosa:SG)ニューロンにおけるtonic電流の変化を正常マウスと比較検討した6, 7)。
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