特集 神経系に作用する薬物マニュアル1998
Ⅰ.受容体に作用する薬物
1.イオノトロピック受容体
1)陽イオンチャネル内蔵型
NMDA受容体
倉本 展行
1
,
荻田 喜代一
1
,
米田 幸雄
1
Nobuyuki Kuramoto
1
,
Kiyokazu Ogita
1
,
Yukio Yoneda
1
1摂南大学薬学部薬理学研究室
pp.329-332
発行日 1998年10月15日
Published Date 1998/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425901597
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哺乳動物中枢神経系において,興奮性神経伝達に携わるグルタミン酸受容体には,イオノトロピック型とメタボトロピック型が存在する。N-methyl-D-aspartate(NMDA)受容体はその活性化に伴い,主にCa2+細胞内流入が励起されるイオノトロピック型受容体サブタイプの一つである。NMDA受容体はほかのサブタイプと同様に,記憶形成や学習獲得に関与するばかりでなく,脳虚血後の遅発性神経細胞死やてんかん,アルツハイマー病,ハンチントン舞踏病あるいはパーキンソン病など,種々神経細胞変性疾患の発症メカニズムに深い関連性を持つ。NMDA受容体はNMDA認識ドメイン,グリシン(Gly)認識ドメイン(GlyB部位),ポリアミン認識ドメイン,およびイオンチャネルドメインなど,少なくとも4種類のドメインから構成される蛋白質複合体として機能すると理解される1)。なかでも,NMDA認識ドメインおよびGlyBドメインはともにチャネル開口に必須である。さらに,NMDAチャネルにはMg2+部位,Zn2+部位,H+部位および非競合的アンタゴニスト結合部位(PCP部位)などの活性抑制部位が存在するので,NMDAチャネル開口は極めて精巧な制御メカニズムの統制下にあるといえる。
一方,近年の分子生物学的研究方法の発展に伴い,ラットおよびマウス脳からそれぞれNMDA受容体遺伝子が単離同定されている。
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