特集 感染症
5.治療期間の設定—経静脈投与から経口投与へのスイッチについてのエビデンス
大路 剛
1
Goh OHJI
1
1神戸大学医学部附属病院 感染症内科
pp.201-208
発行日 2013年12月1日
Published Date 2013/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3103900427
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さまざまな疾患に対して行われる医療の目的は,①急性期の症状からの回復,②完治させて再発させないこと,の大きく2つの概念に分けられる。この概念を感染症治療に当てはめると,①急性期の症状からの回復≒できるかぎり早く,病原微生物の体への害を減らす,②再発させないで完治させる≒病原微生物を根絶する(宿主の免疫が処理できる程度まで減らす)こととなる。
②の完治させるためには,“感染臓器において病原微生物を根絶するために十分な量”の抗菌薬を“十分な期間”投与することが望ましい。しかし,長期間の抗菌薬投与には,投与されている患者への副作用,その患者における耐性病原微生物の発生,医療機関内および地域におけるその抗菌薬への耐性微生物の増加などのデメリットがある。
感染症治療においては,抗菌薬の投与方法も重要である。抗菌薬の主要な投与経路としては,経静脈投与と経口投与がある。経静脈投与は確実に高用量の抗菌薬を投与できるというメリットがあるが,βラクタム系抗菌薬を使用する場合,1日に数回の投与を行う必要があり,外来では治療を行いにくいというデメリットがある。一方,経口投与は,外来にて抗菌薬治療を行いやすいというメリットがあるが,腸管からの吸収にたよるため,理論的には,どうしても感染臓器に対して十分量の抗菌薬が届きにくいというデメリットがある。両者のメリットをとって,経静脈投与で治療開始し,ある程度改善したら,経口投与にスイッチするということが一般的である。
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