特集 感染症
4.抗菌薬の総論—国内事情をふまえた概観
矢野 晴美
1
Harumi YANO
1
1自治医科大学附属病院 臨床感染症センター 感染症科
pp.191-200
発行日 2013年12月1日
Published Date 2013/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3103900426
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人類と微生物の戦いが顕在化したのは,1800年代に遡る。長い中世を経て,ルネサンス,そして科学技術の発達により顕微鏡が開発され,それまでは“見えなかった”小さい生物,つまり微生物が発見されてから,近代医学は幕開けた。近代医学の象徴でもある細菌学は1800年代に花開き,ドイツのコッホや門下生,フランスのパスツールなどによりヨーロッパにて盛んに研究されるようになった。日本の近代医学の父であり,初代のノーベル賞受賞者にもなり得た北里柴三郎,赤痢菌の発見者の志賀潔をはじめ,その門下生らの偉大な業績は枚挙にいとまがない。
当時の微生物への治療方法は,血清療法と“魔法の弾丸”と呼ばれる標的治療,つまり“抗菌化学療法”に大別されていた。世界初ともいわれる梅毒への効果が期待されたサルバルサンを発見したのは,ドイツに留学中の秦佐八郎であった。
そうした時代を経て,現在,臨床現場で使用されている抗菌薬は,1928年に英国のAlexander Flemingがペニシリンを発見したことで大きな展開をみる。第二次世界大戦中,1942年頃に米国で実用化され,多くの兵士が救命された。当時,梅毒,淋菌,負傷兵の外傷などに使用されていた。1942年頃から現在までは,ほんの70年余りであるが,第二次大戦後,抗結核薬をはじめ多数の抗菌薬が次々に開発され,感染症診療は激変した。
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