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術前に外科医,麻酔科医が呼吸器内科医にコンサルトをする際に求めるものとは何だろうか。「現在の肺の状態で手術したらどうなるか?」「肺合併症が起こる可能性が高いのであれば,それを防ぐ手立てはないのか?」ということになるだろう。
術後合併症というと,最初に心臓がイメージされることが多いのではないだろうか。しかし,術後肺合併症post pulmonary complications(PPCs)は,心臓合併症と比較しても頻度は低くなく,また,その他の臓器の合併症と同等か,それ以上に臨床上重要なアウトカムに影響し得る1)。例えば,股関節部の骨折術後患者を調べた大規模後向きコホート研究2)では,全8930人の患者のうち,重大な心臓合併症は178人(2.0%)に発症したのに対し,重大な肺合併症は229人(2.6%)に発症したと報告されている。また,70歳以上の非心臓手術後において,肺と腎臓の合併症だけが長期死亡率に影響した3)という報告や,食道癌に対する食道手術後の術後肺炎は,食道癌そのものの病期に次いで長期死亡率に影響を与える因子である4)という報告がある。よって,心臓と同様に,肺についても適切にリスク評価とマネジメントを行う必要がある。
本稿では,冒頭の疑問に内科医として適切に答えるために,ホスピタリストが知っておくべき術後肺合併症のリスク評価とマネジメントについて,実際の症例の流れに沿って述べる。なお,非心臓外科術後の肺合併症については,やや古いものではあるが2006年にACP*1がガイドライン5)を発表しており,本稿では同ガイドラインを中心に述べる。実は,呼吸器の周術期リスク評価とマネジメントは極めて広い分野を含んでいる。木を見て森を見失わないように,その大原則をまず表1に示す。
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