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本稿は,2016年のHospitalist「周術期マネジメント」特集に掲載された「術後肺合併症(PPCs)のリスクと周術期マネジメント」をアップデートしたものである。「現在の肺の状態で手術したならばどうなるか?」「肺合併症が起こる可能性が高いのであればそれを防ぐ手立てはないのか?」という外科医・麻酔科医の疑問に適切に答えるために,コマネジメントを行う内科医やホスピタリストが知っておくべき,術後肺合併症のリスク評価とマネジメントについて,実際の症例の流れに沿って述べる。
2016年から術前肺評価の原則は大きく変わることはない。まずは,呼吸器の周術期リスク評価とマネジメントの大原則を表1に示す。
術後肺合併症は,心臓合併症と比較しても頻度は少なくなく,また,その他の臓器の合併症と同等か,それ以上に臨床上重要なアウトカムに影響し得る1)。例えば,股関節部骨折の術後患者を調べた大規模後向きコホート研究では,全8,930人の患者のうち,重大な心臓合併症は178人(2.0%)に発症したのに対し,重大な肺合併症は229人(2.6%)に発症したと報告されている2)。また,70歳以上の非心臓手術後において,肺と腎臓の合併症だけが長期死亡率に影響したという報告3)や,食道がんに対する食道手術後の術後肺炎は,食道がんそのものの病期に次いで長期死亡率に影響を与える因子であったという報告がある4)。よって,心臓と同様に,肺についても適切にリスク評価とマネジメントを行う必要がある。
非心臓外科術後の肺合併症のリスク評価とマネジメントについては,2006年にACP*1がガイドライン5)を発表している(かなり古いものではあるが更新されていない)。本稿では同ガイドラインを中心に述べていく。
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