Crosstalk 地域医療×臨床検査・5
木もみて,森もみる
寺裏 寛之
1
1岩手県立千厩病院総合診療内科
pp.633
発行日 2018年5月15日
Published Date 2018/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542201623
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“一患者,一疾患”なのだろうか? 自分に問いかけて,広い視野で診察するように心掛けている.超高齢社会の真っただ中にある地方の地域医療の現場では,複合疾患を有し,複数のプロブレムを抱えている患者に遭遇することが多い1).例えば,高齢者は無症候性細菌尿の頻度が高い2).よって,熱性疾患の精査で細菌尿を認めても,尿路感染症と診断するには,複数の検査を見渡して判断しなければならない.また,インフルエンザの流行警報が毎年のように発令されるが,高齢者はインフルエンザが重篤化して合併症を誘導するため,インフルエンザ1つにしても診断の慎重さが必要である.
岩手県立千厩病院(以下,当院)救急外来に,92歳の女性が発熱を主訴に来院した.来院5日前,同居のひ孫に咳嗽,喀痰の症状があった.次に,2日前から同居の嫁にも咳嗽,喀痰の症状が始まった.同居の家族は医療機関に受診することなく,自然軽快した.患者は1日前から咳嗽,喀痰の症状が出現した.倦怠感もあり,自宅での検温で38℃を超えたために救急外来を受診した.身体所見では,咽頭発赤ははっきりせず,呼吸音は明らかな湿性ラ音なし,下腿浮腫なし,腹部は平たん・軟・圧痛はなく,肋骨脊柱角の叩打痛もなかった.血圧133/68mmHg,脈拍82/分,SpO2 94%,体温38.3℃であった.経過からみて,同居家族からの感染が疑われた.
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