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整形外科医ができることは,手術と内服治療,ステロイドやヒアルロン酸注射,Hydrorelease/Hydrodissection,リハビリ処方など多岐にわたる.その中でも理学療法は,整形外科医がとれない多くの痛みを低侵襲でとることができるため,筆者らは理学療法の魅力に以前から取り憑かれている.この魅力に気づかせてくれたのは,まぎれもなく今回この章を執筆してくださった理学療法士(PT)の先生方であり,一緒にタッグを組んで治療に当たっている,各領域において第一線で活躍されている整形外科医の先生方である.あえてエコーについてはこの章では減らし,実際にどのように評価/治療しているか,その感覚も含めて整形外科医に感じていただけたらと思う.エコー診療に特化してきた人ほど,エコーを触りすぎている弊害にも気付くはずである.
この章を作成した理由は,2つある.1つはエコーを触りすぎて,理学所見を疎かにしていないかという,自身への戒めである.もう1つは,たとえ局所が改善したとしても,その原因となったアライメント不良や全身の身体機能不全などを改善しない限り,再発するケースが多いからである.つまり,痛みの局所治療先行の医療が広まりすぎていることにある.まるで手術のみして,その後は放ったらかしの医療と似ている.手術至上主義の現状に異を唱えて手にとった超音波が,今度は逆の立場になってしまったら本末転倒である.超音波診療に従事すると,得てしてその場の痛みは劇的に改善するが,再発するケースも少なくなく,その原因が何なのか,どうやって次のステップに進めばよいのか,この章がその一助になればと考えている.木を見て森を見ずして,運動器の治療は完結しない.いかに全身を診ることが重要か,超音波診療にあたる者は理解する必要がある.
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