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はじめに
電気インピーダンストモグラフィelectrical impedance tomography(EIT)は,体表面(胸郭)の皮膚に電極の付いたベルトを巻きつけ,電流を流し,電極に挟まれた肺内の電気抵抗の変化を測定し,2D画像に再構築したものである。つまり,呼吸運動により空気が流入すると電気抵抗(インピーダンス値)が変化,その変化量を画像化することで,どの部位でどの程度の空気が分布したかを視覚化することができる1,2)。
1984年にBrownとBarber3)がはじめてEITでの画像化を行ったことを契機に,多くの研究が行われ,日本でも2019年の薬事承認から徐々に普及してきている。
空間分解能は限定的(32×32ピクセルなど)であり,妊婦やペースメーカなどの電気機器が胸郭内にある場合や装着部位に熱傷や外傷がある場合は使用できない点で,CT検査などの画像検査に劣る。一方で,1秒間に最大50枚の画像を再構築することができるため,時間分解能に優れている点,放射線を用いない点,さらに換気の変化をリアルタイムでモニタリングできる点で,ほかの検査にはない利点がある。例えば,呼吸器設定や体位などを変化させた際の換気分布の変化をCT室に移動することなく観察できる。
EITの登場により,さまざまな臨床場面における呼吸状態の観察がリアルタイムに,かつベッドサイドで行うことができるようになった。本稿では,急性呼吸窮迫症候群acute respiratory distress syndrome(ARDS)におけるPEEP設定という観点で,さまざまな手法を紹介するとともに,実臨床でのEITを用いたPEEP設定の実際を紹介する*1。
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