巻頭言
PEEPの話「古いやつだとお思いでしょうが……」
山田 芳嗣
1
1横浜市立大学医学部麻酔科学
pp.1145
発行日 2001年12月15日
Published Date 2001/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404902386
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最近集中治療などの現場では,急性肺傷害やARDS患者に対する機械的人工呼吸に,“Openlung approach”を用いることが流行している.“Open lung approach”とは,一回換気量を従来の約半分ぐらいの量に設定して最高気道内圧を低く抑え,一方呼気終末陽圧(PEEP)には従来よりもずっと高い圧をかける換気法である.このような換気法を用いると,末梢気道や肺胞が毎回の換気で潰れたり再拡張したりすることがなく,常に開存状態に保たれ,また吸気終末に過伸展することもない.したがって,機械換気による組織損傷を最小限に抑えることができ,最終的には急性肺傷害・ARDS患者の生存率を改善することが期待されている.
しかし,この方法の有効性についてのevi—denceは必ずしも多くない.動物モデル実験では多数の研究によってこの事実が明白になっているが,ARDS患者を対象とした臨床研究ではAmatoらが単一施設で行った小規模な無作為比較試験が生存率の有意な改善を示すのみである.また,このAmatoの論文に対して「対照群の生存率が悪すぎる」などいろいろな反論が取りざたされているのをご存知の方も多いと思う.
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