特集 栄養療法アップデート 後編
栄養療法のChampionたちへ
東別府 直紀
1
Naoki HIGASHIBEPPU
1
1神戸市立医療センター中央市民病院 麻酔科/NST
pp.582-583
発行日 2019年7月1日
Published Date 2019/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102200666
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本特集,「栄養療法アップデート」は36編からなるものの,企画当初は分冊予定ではなく,執筆者の方々には「字数制限,今回は厳しいですから」と予めお伝えしていた。しかしいざ始めてみると執筆者の皆様のより高い,より深い内容を伝えたいという情熱,およびこちらからの内容に対する要望の高さ故,とても1冊では収まらず,早い段階で分冊が決定した。読者諸兄には読み通しづらい分量となったかと大変恐縮ではある。
さて,前編の巻頭言で安田先生が示されていたように,栄養療法に関するエビデンスはいまだカオスの様相を呈している。その一因として,研究デザインの立案の難しさが挙げられる。例えば,高タンパク質投与の有用性を検討する臨床研究を行うとする。高タンパク質群でのアミノ酸投与を増やすと当然エネルギー量が増え,対照群とのエネルギー量に差が生じる。その差を埋めるために対照群では糖質もしくは脂質を増やす必要が生じ,結果としてタンパク質投与量ごとの比較を目的とした研究でも,各群に投与される栄養素の比率が異なる状態で検証することとなる。このように,栄養療法の研究においては,一つの要素のみに注目した比較という点で難しさがある。さらに投与ルート,炎症の状態による生理的な違い,免疫能に与える影響の違いや吸収率などの違いなど,多様な側面からの影響が否定できないことがより状況を複雑にしている。
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