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人工呼吸器関連肺傷害ventilator-associated lung injury(VALI)は,ARDS患者の予後に大きな影響を与えることが知られている。VALIを最小限にするため,肺保護換気が確立されて50年が経過した。本稿では,VALIの機序,肺保護換気の歴史,VALIを最小限にするための生理学的知識をまとめ,さまざまな基礎・臨床研究のエビデンスを取り上げる。
Main points
●急性呼吸窮迫症候群(ARDS)は,不均一な肺含気分布を呈する。仰臥位の場合,腹側肺に過膨張が多く認められ,重力に従って背側肺領域に虚脱肺が多くなる。
●不均一な肺含気分布を規定しているのは胸膜圧であり,ARDSでは重力に従って胸膜圧の分布が著しく不均一であることが原因である。したがって,経肺圧は腹側肺領域で高く,背側肺領域で著しく低下する結果,腹側肺領域では肺胞サイズが大きく(過膨張),背側肺領域では肺胞の虚脱を生じ,正常肺はその間の限られた領域に存在することになる(baby-lungコンセプト)。
●人工呼吸器関連肺傷害は,高肺容量で発生する状況と低肺容量で発生する状況がある。また,炎症は正常肺から正常肺と虚脱肺の境界部分(含気不良領域)に多く認められる。
●ストレスは,肺実質に対する伸展圧のことで,経肺圧として反映される。ストレインは,ストレスによって肺実質が安静位(機能的残気量)から変形する程度を示す。ARDSでは激減した正常肺で1回換気量を受けており,正常肺は吸気ごとに高い経肺圧(ストレス)とストレインに曝されている。
●driving pressureは1回換気量を呼吸器系コンプライアンス(Crs)で標準化した値,つまり“機能的”な肺のサイズで標準化した値であり,換気に関与する正常肺に加わる肺実質の変形(ストレイン)をより直接的に示すことができる。
Ventilator-associated lung injury (VALI) has a significant impact on the outcome of patients with acute respiratory distress syndrome (ARDS). Fifteen years have passed since a lung-protective strategy for patients with ARDS was established. In this review article, we review the mechanisms of VALI, the history of lung-protective strategies, discuss novel physiologic approaches to minimizing VALI and highlight a number of experimental and clinical studies to support these concepts.
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