特集 人工呼吸器
前書き:人工呼吸器を患者の良きサポーターとするために
則末 泰博
1
,
竹内 宗之
2
Yasuhiro NORISUE
1
,
Muneyuki TAKEUCHI
2
1東京ベイ・浦安市川医療センター 救急集中治療科 集中治療部門
2大阪母子医療センター 集中治療科
pp.497-498
発行日 2018年7月1日
Published Date 2018/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102200529
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人工呼吸器管理は集中治療の基本です。技術の進歩により,かつては患者にとって苦でしかなかった人工呼吸器という道具は,患者の呼吸に合わせて補助をする“患者の良きサポーター”になり得るまでに進化しています。しかし,そのような進化も,その機能や患者に及ぼす影響などを十分理解して使用しなければ,そして患者とグラフィックモニターをしっかりと観察しなければ,人工呼吸器はかつてのような酸素化とガス交換だけを目的とする単なる道具の域を超えることはありません。それどころか,性能の進化とともに,患者に及ぼす害も大きくなる可能性もあります。
例えば,患者-人工呼吸器の同調性に優れ,患者の呼吸努力に応じたサポートをするモードであるPAVやNAVAを重症ARDSの超急性期に使用したらどうなるでしょうか。代謝性アシドーシスや肺の炎症からの刺激による,本来望ましくない患者の強い呼吸努力を人工呼吸器はさらにサポートすることになるため,1回換気量は不適切に大きくなり,肺傷害が助長されるかもしれません。また,デュアルモードと言われる“1回換気量を一定に保ちながら圧サポートをコントロールするモード”を,呼吸困難感が強い急性呼吸不全の患者に使用したらどうなるでしょうか。患者のあえぎ呼吸により1回換気量が大きくなると,人工呼吸器は本来必要であるはずの圧サポートをどんどん低下させ,患者は疲労してしまいます。我々,人工呼吸を患者に施行する者は,人工呼吸器と人工呼吸が患者に及ぼす影響について深い知識をもつ義務があります。
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