特集 輸液・ボリューム管理
Part 2 各論
6.外傷と熱傷の輸液管理—病態を理解し,患者の状態に合わせた輸液を行う
鈴木 秀鷹
1
,
安田 英人
2
Hidetaka SUZUKI
1
,
Hideto YASUDA
2
1武蔵野赤十字病院 救命救急センター
2鉄蕉会亀田総合病院 集中治療科
pp.421-437
発行日 2017年4月1日
Published Date 2017/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102200394
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外傷を含めた出血性ショックをまねく病態に対する,循環血液量の改善を目的とした輸液療法には,循環の是正は達成できるものの,逆に凝固異常をきたして出血のコントロールができずに出血を助長させてしまうというジレンマがある。また,重症熱傷に対する輸液療法においては,近年“fluid creep”という概念により大量輸液による弊害が強調され,Parkland公式による晶質液のみの輸液蘇生に対して懸念の声も上がっている。果たして,外傷や熱傷に対する輸液療法は,その他の敗血症などによるショックの場合と同じように行ってよいものか,それとも外傷や熱傷には特有の輸液管理が推奨されるのか。本稿では,外傷および熱傷に対する輸液療法の現在までのエビデンスを解説し,そこから読み取れる現段階において推奨できる輸液療法に関して論じる。
Summary
●外傷・熱傷の初期輸液において,推奨される輸液製剤は乳酸リンゲル液などの晶質液であり,アルブミンに代表される膠質液は総輸液量を減少させる可能性はあるが予後には影響を与えない。
●外傷性出血性ショックにおけるpermissive hypotensionの有用性に関しては,まだまだ明確な結論は出ておらず,年齢や動脈硬化などの既往歴を参考にして個々の患者ごとに考慮する必要がある。
●外傷・熱傷の輸液管理は,熱傷における“fluid creep”に代表される大量輸液の弊害を避けるために「必要最低限な輸液量」を心掛けることが大切である。
●熱傷における初期輸液量は,大量輸液の弊害を避けるためにも,Parkland公式よりもその半分量である修正Brooke公式のほうがよい可能性がある。
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