特集 輸液・ボリューム管理
Part 2 各論
5.肝硬変,急性肝不全の輸液管理—アルブミン,大量腹水穿刺,人工肝補助療法を用いたボリューム管理
岡本 賢太郎
1
,
藤本 佳久
1
Kentaro OKAMOTO
1
,
Yoshihisa FUJIMOTO
1
1東京ベイ・浦安市川医療センター 救急集中治療科 集中治療部門
pp.403-419
発行日 2017年4月1日
Published Date 2017/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102200393
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肝硬変・急性肝不全の患者は,アルブミン低下による体液の血管外漏出,門脈圧亢進による腹水貯留と腸管の循環血漿量増加,レニン・アンジオテンシン系や交感神経の亢進による心機能亢進など,特殊な血行動態を呈する。このような患者の血行動態が不安定になった場合は,病態生理を意識しながらボリューム管理をする必要がある。本稿では,肝硬変や急性肝不全の病態生理およびそれに基づいたボリューム管理を中心に解説する。また本邦では広く行われている急性肝不全における血漿交換+血液濾過透析については「人工肝補助療法」として,国内外のガイドラインでの推奨やその背景についても触れる。
Summary
●肝硬変・急性肝不全はともに,末梢血管抵抗低下・有効循環血漿量低下を本態とする循環不全を呈するが,慢性の肝血管抵抗増加・門脈圧亢進由来の症状は肝硬変により特徴的である。
●肝硬変患者において,アルブミンは大量腹水穿刺,特発性細菌性腹膜炎,肝腎症候群で予後を改善し得るエビデンスがあり,使用が推奨されている。
●現時点で,人工肝補助療法の有効なエビデンスはacute liver failureに対してのhigh-volume plasma exchangeのみであり,今後のエビデンスの蓄積が待たれる。
●本邦においての人工肝補助療法は血漿交換+血液濾過透析のことであり,臨床的予後を改善するエビデンスは乏しい。
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