増刊号 Common Disease 200の治療戦略
消化器疾患
肝硬変による腹水
板倉 勝
1
1東海大学東京病院消化器肝臓病センター内科
pp.187-189
発行日 1995年11月30日
Published Date 1995/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402904039
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肝硬変における腹水の病態
肝硬変による腹水の発生には数多くの因子が関与している1,2).すなわち,肝での線維増生と再生結節による圧迫のため門脈圧が亢進し(アルコール性肝硬変では,これらの病的変化に肝細胞の膨化と中心静脈周囲線維化の影響が加わる),一方,肝におけるアルブミンの合成能低下に伴い,血清アルブミンが減少して血漿浸透圧が低下する.その結果,腹腔内の毛細血管レベルでの血管内と腹腔内の物質平衡は大幅に腹水生成の方向に傾く.さらに,再生結節による肝静脈枝の圧迫と,アルコール性肝硬変における中心静脈周囲線維化は,ともに類洞内圧亢進の原因となり,肝で生成されるリンパ液の量が増加し,一部は腹腔内に漏出して腹水増加の一因となる.その結果,有効循環血漿量が減少し,本症における末梢での動静脈シャントと血中に増加する血管拡張因子による末梢での血管抵抗減少も加わって有効循環血漿量はさらに減少する.
肝硬変において末梢血管を拡張させる因子としてはグルカゴン,サブスタンスP,エンドトキシンによって合成が増加するNOなどが考えられている.有効循環血漿量の減少に伴って生じるのは,交感神経の緊張増加による尿細管でのNa再吸収の亢進である.レニン・アンギオテンシン系の活性化に伴うアルドステロンの分泌亢進も生じ,肝での代謝能低下も相まって,血中濃度が増加し,Na・水の貯留傾向が増強する(図1).
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