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急性脳傷害acute brain injuryとは,外傷性脳損傷traumatic brain injury(TBI),急性虚血性脳卒中acute ischemic stroke(AIS),くも膜下出血subarachnoid hemorrhage(SAH),頭蓋内出血intracranial hemorrhage(ICH),心停止蘇生後脳症,痙攣重積などを含む中枢神経障害の総称である。
急性脳傷害患者の管理における最大の使命は,“二次性脳損傷の予防”であり,それは他の臓器不全患者の管理において,残存臓器機能の温存が重要であることと何ら変わりはない。つまり,不可逆的ダメージを受けるに至らなかった脳細胞における,エネルギーや酸素の需給バランスを保つことに焦点を当てた管理が重要であり,これらの供給側因子としての脳血流量の維持,ひいては適切な輸液管理による循環血液量(ボリューム)の維持が重要な管理目標の1つとなる。
さらに,急性脳傷害患者の管理においては,“脳は浮腫などによる容積変化に極めて弱い臓器である”という特徴が,その輸液管理を独特で困難なものにしている。つまり,急性脳傷害患者の管理においては,脳浮腫(主には細胞内液量の増加)を増悪させないことにも留意が必要であり,細胞内外の体液シフトのコントロール,ひいては適切な輸液管理による血漿張度の維持も重要な管理目標の1つとなっている。
本稿では,急性脳傷害患者における輸液管理について,その実践のうえで理解が欠かせない病態生理を総論で,そして,実際に用いるべき輸液製剤,目指すべきボリュームステータス,さらには循環血液量の評価方法について,文献的考察を各論で述べる。
Summary
●急性脳傷害患者の輸液製剤は,低張液を避け,等張晶質液を第一選択とする。
●急性脳傷害患者に対する人工膠質液の使用を支持するエビデンスはない。
●外傷性脳損傷に対する蘇生輸液としての4%アルブミン製剤や,虚血性脳卒中に対する神経保護作用を期待しての高用量25%アルブミン製剤は避けるべきである。
●高張液は頭蓋内圧を低下させるが,転帰を改善させるという確固たるエビデンスはない。
●hypovolemiaだけでなくhypervolemiaも避け,euvolemiaを目指すべきである(遅発性脳虚血発症後であっても,hypervolemiaではなくeuvolemiaが望ましい)。
●循環血液量の評価方法としては,超音波検査や動脈圧波形解析法,経肺熱希釈法などが推奨される(静的指標は推奨されない)。
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