特集 輸液・ボリューム管理
Part 2 各論
2.心不全の水分管理—水の出し入れだけではなく,病態生理に応じた水分管理が重要
杉崎 陽一郎
1
,
平岡 栄治
2
Yoichiro SUGISAKI
1
,
Eiji HIRAOKA
2
1神戸大学大学院医学研究科 内科学講座・循環器内科学分野
2東京ベイ・浦安市川医療センター 総合内科
pp.355-369
発行日 2017年4月1日
Published Date 2017/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102200390
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心不全の治療において必ず必要となる「水分バランスの調整」だが,ACCF/AHA*1の心不全ガイドライン1)を参照すると,急性非代償性心不全では水分バランスを適切に保つことを推奨している。また,臨床的なうっ血の改善だけでなく,血行動態的うっ血を解除して退院すれば再入院が少ない2,3)ことが報告されている。うっ血の改善方法として利尿薬や血管拡張薬,非侵襲的換気(NIV),体外限外濾過(ECUM)などがあるが,治療で重要なことは患者のうっ血の原因となっている「心機能生理」を考えることである。例えば,全身血管抵抗が高い急性心不全で水分再配分型の肺うっ血をきたしている症例では,利尿薬のみで治療を行うと,うっ血は解除できても末梢循環が悪化することがあるため,治療の主役は血管拡張薬である。このように,心機能生理から心不全にアプローチし,うっ血の病態生理を把握することは,心不全治療において非常に重要である。
そこで本稿では,圧・容積関係をはじめとした心機能の生理の観点から,心不全における水分管理に関して概説する。
Summary
●心機能生理から心不全にアプローチし,病態生理を把握することは重要である。
●Frank-Starlingの心機能曲線,P-V loopを理解することで,ピットフォールに陥ることを防ぐとともに心不全へのアプローチが深みを増す。
●「心不全治療=利尿薬」ではない。心拍出量維持,うっ血のコントロールのために,血管拡張薬,利尿薬の投与,および心臓自体の機能改善を考えなければならない。
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