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腫瘍崩壊症候群tumor lysis syndrome(TLS)は,大量の腫瘍細胞が短時間で崩壊し,その細胞内物質や代謝産物が血液内に流入し,生体の排泄能を上回った際に体内に蓄積することで,さまざまな臓器不全をきたす症候群である。重篤な場合や適切な治療がなされなかった場合は,急性腎不全や痙攣,致死的不整脈をまねくため,oncologic emergencyの1つとされている。もともと,TLSは血液悪性腫瘍の治療時には認められることがあったが,分子標的治療薬などの有効性の高い薬物の出現により,以前では頻度の低かった他の血液疾患や固形腫瘍でも認められるようになった。TLSの発症リスクの上昇,基礎疾患の多様化に加えて,TLSの主病態の1つである高尿酸血症に対して,尿酸分解薬であるラスブリカーゼが登場し,TLSを取り巻く環境が変化し,腫瘍を治療する医療者においてさらなるTLSの存在の認知と新たな予防,治療の確立が不可欠となった。近年,欧米でもTLSに対するガイドライン1)が提唱され,我が国でも日本臨床腫瘍学会がそれらに基づいて診療ガイダンス2)を作成し,TLS診療の一助となっている。本稿では,TLSの病態や新規尿酸降下薬を含めた治療を示すとともに,診療ガイダンスに基づくリスク分類に応じた予防,治療について概説する。
Summary
●腫瘍崩壊症候群は,急性腎不全,痙攣,不整脈をきたし,時には致死的な状況をまねくoncologic emergencyの1つである。
●新規薬物などの治療の変遷に伴い,腫瘍崩壊症候群は血液疾患だけではなく,固形腫瘍にも認められるようになった。
●治療開始前に腫瘍崩壊症候群の発症リスクを評価し,適切な予防,治療を行う。
●腎障害併存下では腫瘍崩壊症候群は急速に悪化する可能性があるため,腎代替療法を早目に検討する。
●ラスブリカーゼは高尿酸血症の治療において極めて有用であるが,投与方法と投与症例を慎重に検討する必要がある。
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