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ICUにおける低栄養は,患者の感染性合併症の増加,ICU滞在日数の増加,死亡率の上昇に関与する1)。また,経腸栄養は経静脈栄養に比して,重症敗血症・敗血症性ショックの合併,入院費用などの面で有利である2,3)。これは,経腸栄養には粘膜萎縮の予防,腸管細菌叢の構成を保つ,腸管免疫の保持などのメリットがあるからと考えられている。そのため,ICUに入室する重症患者にとって,早期に,経腸で,十分な量の栄養を投与することはコンセンサスであると言える。ただし,具体的な栄養開始までの時間や投与量などに関しては,質の高いエビデンスは得られていないのが現実である。重症患者に対する栄養療法のガイドラインとしては,SCCM/ASPEN*1によるもの4),ESPEN*2によるもの5),CCPG6)*3が出版されている。これらのガイドラインの間でさえも,姿勢の異なる部分がある。この背景には,必要エネルギー量の推定方法さえも確かなものがなく,栄養療法のなかだけでも交絡する因子が多すぎる点はもちろん,臨床試験のデザインの質,そして,企業との利益相反conflict of interestという問題がある。現段階では,急性呼吸窮迫症候群(ARDS)に対する最適な栄養療法を提言することはできない。本稿では,【いつ】【どれくらい】【何を】の項目に分けて,最近の話題を俯瞰する。これにより,各施設の実情に合ったプロトコルを作成する一助になればよい。
Summary
●早期(ICU入室から24〜48時間以内)に経腸栄養を開始する。
●現在の知見では,目標エネルギー量は20〜25kcal/kg程度とすることが妥当。嘔吐などのリスクがある場合には,ICU入室から1週間程度は低エネルギー量を許容する。
●2011年以前に行われた研究では有効とされていたω3系脂肪酸は近年では否定的な結果が多い。
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