今月の主題 炎症性肺疾患へのアプローチ
診断のポイントと治療
その他の肺疾患
ARDS
吉矢 生人
1
,
竹田 清
1
1大阪大学医学部・麻酔学教室
pp.270-273
発行日 1988年2月10日
Published Date 1988/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402221534
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■概念
ARDS(Adult Respiratory Distress Syndrome)はAshbaugh,Pettyら1,2)によって提唱された急性呼吸不全症候群である.1967年にAshbaughらが1)報告した症例は12例で,外傷による肺振とう症ないし肺挫傷(lung concussion or contusion)が4例,胸部ならびに腹部銃創が各1例,多発骨折を伴う多発外傷が1例,ビールス性肺炎(内1例は誤飲性肺炎と疑われた)の疑いが4例,急性膵炎1例であった.かれらは,成人で人工呼吸管理を必要とした272例の症例の中で,新生児の肺硝子膜症(hyaline membrane disease)とよく似た共通の病態を示すものがあることに注目して,これらの12例を選び出した.Ashbaughらが最初に報告したARDSの臨床像は表1のごとくである.この病態は,胸部X線上,瀰慢性問質性肺水腫像を呈するもので,このため広範な肺胞虚脱を来し,肺内シャントが増加して高度の低酸素血症を来すものである.ARDSの定義は,これらの病態がさまざまなストレスを契機として,それまでは病変のなかった肺に起こり,しかも肺欝血に伴う心原性肺水腫ではないと言うものである.
その後,同様の臨床像を呈する急性呼吸不全の症例が次々と報告された.
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