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2010年に発表されたACURASYS1)*1は,筋弛緩薬cisatracuriumを重症ARDS(PaO2/FIO2<150)に早期(発症48時間)に用いることにより,死亡率を改善することを示唆した。この研究を機に,重症ARDSに対して筋弛緩薬を使用するプラクティスが以前よりも脚光を浴びるようになったのは事実である。本稿では,重症ARDSに対する筋弛緩薬の使用が,予後改善のために有望視される理論的背景,重症患者において,筋弛緩薬を使用する際に知っておかなければならない薬理学およびリスク,ACURASYSを含むARDSに対する筋弛緩薬の主要臨床研究を解説し,最後に,重症ARDSに対してルーチンに筋弛緩薬を使用すべきか否かに関して筆者らの見解を述べる。
Summary
●ACURASYSでは,発症48時間以内の重症ARDSに対しcisatracuriumを使用することで生命予後の改善が示唆された。しかし,検出力が不十分であるばかりでなく,主要評価項目である90日粗死亡率はベースラインの患者背景をCox回帰分析によって補正して初めて差が示されたものである。よって,ACURASYSは早期重症ARDSに対してcisatracuriumの使用を推奨する決定的な根拠とはならない。
●また,本邦にはcisatracuriumに代表されるベンジルイソキノリニウム系非脱分極系筋弛緩薬がなく,薬理学的特性から重症患者に対し持続投与しにくいだけでなく,critical care polyneuropathyとの関連も示唆されるアミノステロイド系非脱分極性筋弛緩薬しか利用できない。
●これらのことから,本邦では早期重症ARDSに対し筋弛緩薬をルーチンに使用することに関しては慎重であるべきである。
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