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腹臥位換気prone position ventilationは,成人の低酸素血症に対するレスキュー目的の治療として1970年代から臨床現場で使用され始め1),当施設(札幌医科大学医学部集中治療医学)でも1990年代後半2)より現在に至るまで施行してきた。しかし,ARDSに対するRCTでは,酸素化能の改善は得られたものの3,4),予後改善効果は証明されていなかった。2013年にGuérinら5)は,重症ARDS〔PaO2/FIO2(P/F)比が150未満〕に対して低1回換気量low tidal volume(LTV)併用下での腹臥位換気の早期導入が予後を改善させ(28日後死亡率半減),重篤な合併症の発症リスクも増加しなかったとのRCTを報告し,現在,その有効性が期待されているところである。ただし,GuérinらのRCTは,5年以上腹臥位換気を行っている,つまり腹臥位に精通した施設における成績であることを無視することはできない6)。現時点で本治療法を安全かつ確実に行うには,体位交換に必要な人的配備と,技術的にも慣れ,かつ気道管理に熟練した医師が24時間体制で対応可能な施設で行うことがすすめられる。
本稿では,今後,自施設で腹臥位換気を新しく始めるにあたって,どのような準備をし,どのような点に注意を払い,安全かつ効果的な腹臥位換気を行ったらよいかについて概説する5,7,8)。
Summary
●重症ARDSに対して,低1回換気量併用下での腹臥位換気の早期導入によって,予後を改善させることが期待されている。
●重症ARDSに対する腹臥位換気を安全かつ有効に行うには,適応とともに,合併症を引き起こさずに施行できる十分な人的な体制整備と,技術的な慣れ,綿密な人工呼吸器管理が必要である。
●上記に加えて,気道管理に熟練した医師が24時間体制で対応可能な施設で行うことがすすめられる。
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