特集 ARDS Berlinその後
【コラム】ボリュームステータスとは何か?—静脈系の生理学からの視点
則末 泰博
1
Yasuhiro NORISUE
1
1東京ベイ・浦安市川医療センター 呼吸器内科・集中治療科
pp.66-68
発行日 2015年1月1日
Published Date 2015/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102200131
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ボリュームステータスとは何であろうか。臨床上で問題にするのは血管内の循環血漿量のことであろう。一般的にはこの循環血漿量が多すぎることをhypervolemia,正常範囲内にあることをnormovolemia(またはeuvolemia),そして少なすぎることをhypovolemiaと呼んでいる。さらにいうと,循環血漿量が多すぎることにより,肺水腫による低酸素,うっ血性腎不全,うっ血性肝不全などの臓器不全をきたしている状態をhypervolemia,循環血漿量が少なすぎることにより心拍出量が低下し,臓器や末梢組織の循環不全をきたしている状態をhypovolemiaと単純化してしまってもよいかもしれない。このボリュームステータスを的確に反映する指標は,はたしてあるのだろうか。
Summary
●輸液反応性は「輸液により左室の1回拍出量が増加するかどうか」を判断する指標であるが,輸液反応性があることと,患者に輸液が必要であることは,必ずしも同義ではない。
●静脈系には自己調節能が備わっており,能動的に拡張・収縮することで,動脈血容量と静脈血容量の割合を調節し,心拍出量を維持するのに必要な静脈還流量を保っている。
●安全に除水や利尿ができるか否かを判断するための指標はまだないが,動脈血容量を維持する代償機能の限界を予測するという観点から「マイナスバランスに対する忍容性」という概念が有用な可能性がある。
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