特集 術後管理
4.周術期心筋虚血の診断と治療―「神頼み」の薬物投与ではなく,病態生理に基づいた管理を
山口 大介
1
YAMAGUCHI, Daisuke
1
1国立がん研究センター中央病院 麻酔科・集中治療科
pp.243-262
発行日 2012年4月1日
Published Date 2012/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102100412
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個人的な思いとして,筆者が医師になった頃の約20年前と比べ,周術期の心疾患管理も随分と様変わりしてきたように思う。その1つに,以前に比べ,より多くの高齢者が手術(特に,開胸,開腹などの大手術)を受けるようになったことがある。現に筆者の病院でも,80歳以上の癌手術が当たり前のように行われている。それ故,毎朝の麻酔カンファレンスでも,その患者の心疾患(虚血なり心不全なり)についての議論が珍しくなくなり,周術期心筋虚血の管理が毎日の仕事の1つにすらなっている。
周術期心筋虚血予防に用いる薬物も,さまざまなガイドラインが上梓されるにつけ,硝酸薬(特に貼付薬)からニコランジル,そしてβ遮断薬,というように変遷してきた。さらには最近のβ遮断薬論争の迷走ぶりに,日常業務さえもが踊らされているように思う。
本稿では,周術期心筋虚血ならではの特殊な病態の理解,いかに高リスク患者を拾い上げるか,「心筋虚血の最大の治療は予防である」という観点から予防策をどうたてるか,そして不幸にも虚血を生じた場合にいかなる治療を行うか,を論じる。
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